開発者コラム 光触媒の親水性とセルフクリーニング効果について
セルフクリーニングについて
光触媒のセルフクリーニング機能は、一般的に「活性酸素による分解作用」と「高い親水性」の2つの働きによって得られると説明されています。しかし、私たちは数多くの施工実験を重ねる中で、この通説に疑問を持つようになりました。
ナノゾーンソリューションを自動車の塗装面やプラスチック表面に施工した際、確かに優れた親水性が発現することを何度も確認しています。しかし、施工時にオーバースプレー(過剰噴霧)を行い、表面の酸化チタン微粒子の厚みや密度の均一性が失われると、同じ表面であっても親水性が失われ、疎水性(水をはじく性質)に変化することを確認しました。
重要な発見は、オーバースプレーになってもセルフクリーニング機能自体は低下しないという点です。
この結果から、「セルフクリーニング機能は本当に親水性によるものなのか?」という疑問が生じました。
光触媒のセルフクリーニング、2つの説
光触媒によるセルフクリーニングの原理として、一般的に以下の2つの説が提唱されています。
- 有機物の分解作用:表面に付着した汚れの密着力を、酸化分解によって低下させる
- 親水性による洗浄作用:親水性により、汚れと施工表面の間に水を浸透させ、汚れを流しやすくする
有機物の分解については、多くの実験報告や実用事例で十分に確認されており、JIS規格試験でも様々な素材表面に対して試験方法が細かく定められています。しかし、親水性によるセルフクリーニング効果については、いくつかの疑問があります。
親水性は酸化チタンの性質なのか?
多くの光触媒製品には、酸化チタンよりもはるかに多量のバインダー(接着剤)が配合されています。施工表面のほとんどはこのバインダーで覆われることになります。そのため、測定される親水性が「酸化チタンの光触媒作用」によるものなのか、それとも「バインダー自体の物性」によるものなのか、判別が困難です。
汚れと表面の間に水は本当に浸透するのか?
これが最も重要な疑問点です。
光触媒の基本原理は以下の通りです。
紫外線が酸化チタン表面に当たる → 酸素または水分が活性化してラジカル(活性酸素)になる → 有機物を分解する
ここで重要なのは、光触媒は光が当たっているときのみ作用するという点です。
具体例で考えてみましょう
建物の外壁に光触媒塗料を施工したとします。そこに鳥が糞をしました。糞が乾燥すると、表面に固く付着します。
この状態では:
- 糞が表面を覆っているため、酸化チタンに光が届きません
- 光が届かなければ、光触媒作用は発生しません
- 光触媒作用がないのに、親水性だけで固く固着した糞の下に水が浸透するでしょうか?
答えは「No」です。光が遮られた状態では、光触媒の親水性効果は発生しないのです。
以上の原理と実験結果から、私たちは以下のように考えています。
親水性とセルフクリーニングの関係
一部の光触媒製品では、親水性とセルフクリーニングを関連付けて特性を強調していることがありますが、実際には:
- 測定される親水性は、主にバインダーの性質によるもの
- 酸化チタン自体の寄与は限定的
- 親水性によって「汚れと表面の間に水が浸透する」という説は、誤解に基づいている
本当に有効なセルフクリーニングの仕組み
実効性のある説は、有機物分解作用です。
光触媒によって汚れ(有機物)の密着力が分解され、弱められることで、汚れが付着しにくく、落ちやすくなる。これが光触媒の本質的なセルフクリーニング効果だと考えています。
これは、数多くの施工実験と観察から得られた、私たちの見解です。
※本内容は弊社の研究・実験結果に基づく見解であり、一般的な光触媒製品すべてに当てはまるものではありません。
広報:清水

