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開発者コラム③ 新しい技術が社会に認められるまでの「3つの関門」

新しい技術が社会に受け入れられるまでには、3つの大きな関門があるといわれています。

1)悪魔の川 ― 研究段階(常識への挑戦)
革新的なアイデアを生み出すことからすべてが始まります。常識にとらわれず、未知の領域に踏み込む発想が求められます。そのアイデアを現実のものとするために、まずは基礎研究を行い、必要な機能や構造を実現するための探究が続きます。広く深い自然科学の理解を土台に、まだ見ぬ未来を想像し、実験を重ねて新たな世界を切り拓いていくのです。

この段階では、研究開発製品が社会の実用的な要求に応えられるレベルに達していると、客観的に確信できるまで、実験室レベルでの試行錯誤が続きます。

「悪魔の川」を渡るには、終わりの見えない不安と向き合いながら、自らのアイデアと科学的仮説をどこまで信じ抜けるかが問われます。熱意を持って冷静に観察し、得られたデータを正しく選別・判断する努力を継続できるかどうかが、成功の鍵を握ります。

この時期は孤独で困難なものですが、実は最も面白く、創造的な時間でもあります。

2)死の谷 ― 事業化への研究開発
研究成果を実際の製品として世に出すには、どのような材料や設備を用い、効率的かつ再現性のある製造方法を確立するかが重要です。さらに、社会が求める機能を満たしつつ、許容されるコスト内に収め、既存の流通に適した形に仕上げる必要があります。

市場に受け入れられる価格や使いやすさを実現するには、アイデアを形にするための研究とは異なる視点と技術が求められます。素材の保存性や加工性、設備の整備、メンテナンス性、製品の安定性や再現性、包装や流通の適正など、数多くの条件を一つひとつクリアしていく必要があります。

3)ダーウィンの海 ― 市場開拓
「悪魔の川」を渡り、「死の谷」を越えた先には、いよいよ市場という広大な海が待っています。まるで『ワンピース』の冒険のような旅が始まるのです。

この段階では、もはや研究者個人の力だけでは限界があります。特に革新的な製品の場合、その機能や利点をどのように市場に伝え、理解と支持を得るかが、成功の命運を大きく左右します。

市場が何を求めているのかを正確に見極め、どのように説明し、何を見せれば理解が得られるのか。これこそがマーケティングの核心です。忍耐力、楽観的な姿勢、そして時代の流れを読む嗅覚が、正しい方向と手段を導いてくれるでしょう。

この挑戦は、nanozone JAPAN社のメンバーだけでなく、製品に関わるすべての人々のアイデア、力、努力の結集によって成し遂げられるものです。

 


みなさん、いかがでしたでしょうか?

今回の内容をまとめると・・・

技術が社会に受け入れられるまでには、科学的探究 → 技術的実装 → 社会的適応という3つの異なるフェーズがあり、それぞれに異なるスキルと視点が求められるということです。

1)悪魔の川(研究段階)
本質:常識を超えるアイデアの創出と、基礎研究による実証。
課題:成果が見えにくく、孤独で不確実性が高い。
必要な力:情熱、観察力、科学的思考、粘り強さ。

2)死の谷(事業化への研究開発)
本質:研究成果を製品として形にする段階。
課題:コスト、再現性、流通、ユーザビリティなど多面的な要件。
必要な力:エンジニアリング、製造技術、コスト管理、実用性の追求。

3)ダーウィンの海(市場開拓)
本質:製品を市場に浸透させる段階。
課題:競争、認知、マーケティング、顧客理解。
必要な力:マーケティング戦略、柔軟性、時代感覚、チームワーク。

 

広報:清水

 

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